

株式会社静岡銀行
地方創生部 推進役
井出 雄大 様
TECH BEAT Shizuokaは、静岡県内事業者と先端技術を持つスタートアップ企業との共創の場を提供し、県内産業の活性化や新たなビジネスの創出を図るオープンイノベーションプログラム。豊かな自然環境を有し、多彩な産業が集積する静岡県から、新しい価値の鼓動を生み出すため、活動を続けています。
お話を聞いたのは、静岡銀行の地方創生部に所属する井出雄大さん。「静岡県内の企業とスタートアップ企業との出会いを通じて、オープンイノベーションを起こしたい」と語るその想いの背景について、様々なお話を伺いました。
こちらの記事では、【Tailor Works】を使って、イベントをオフラインからオンラインへ切り替えた時のお話を中心にご紹介します。

────まずは、井出さんとTECH BEAT Shizuokaのご紹介をお願いします。
井出:TECH BEAT Shizuoka 実行委員会で事務局を務めております、静岡銀行の井出と申します。TECH BEAT Shizuokaは、静岡銀行と静岡県が協同して、静岡県内の事業者と首都圏のスタートアップ企業とのビジネスマッチングを通じて、静岡県内の経済・産業の活性化や、新しいビジネスの創出を図るプロジェクトです。私が所属する地方創生部では、地域活性化に関わる事業の企画・運営や自治体との連携を担っており、その一環としてTECH BEAT Shizuokaを担当しています。
私たちが描く「県内にオープンイノベーションの風土を醸成し、事業者同士の化学反応によって新たな価値を生み出したい」という想いの実現に向けて、多くの方々が集い協働するコミュニティを目指しています。

────現在は、何名くらいで活動されていますか?
井出:全体の企画立案や運営の統括は、私たち地方創生部と、静岡県 産業イノベーション推進課が連携して行っています。また、スタートアップ企業の招へいは、当行のイノベーション推進室と静岡県 東京事務所を中心に実施し、テイラーワークスさんにも一部サポートしていただいています。さらに、TECH BEAT Shizuokaの肝である「マッチング」を推進するため、銀行のお取引先との接点を持つ営業店や本部のフロント部門の協力を得ていますが、コアメンバーは10名前後です。
オフラインからオンラインイベントへの切り替えに苦労
────TECH BEAT Shizuokaのような大きなコミュニティを運営されている中で、「難しかった、大変だった」と感じたことはありますか?
井出:一番大変だったことは、新型コロナウイルス(以下:コロナ)の感染拡大を受けて、イベントの場を急遽オフラインからオンラインへ切り替えなければいけないことでした。
────TECH BEAT Shizuokaは以前からずっとオフラインで開催されていたのでしょうか?
井出:これまでに5回、商談イベントを実施しているのですが、結果的にオフラインだったのは2019年7月に開催した1回目だけですね。2020年3月に開催した2回目(分野別農業版)は当初、沼津市の先端農業推進拠点「AOI-PARC」で実施する予定でしたが、コロナ禍で開催3週間前に急遽オンラインに切り替えざるを得なくなりました。Tailor Worksの導入は、2020年7月のイベント以降です。

オフラインのイベントでは、県内の事業者が気軽に立ち寄って話を聞くことができ、立ち話が商談に繋がることもありました。しかし、オンラインイベントは一方的な情報発信になりやすく、偶発的な出会いや相互理解が生まれにくいんですよね。スタートアップ企業のライトニングトークを見るだけでは、事業内容やソリューションを正しく理解することも難しいのではないかと感じています。
実際にオンラインイベントをやってみたからこその学びでしたが、参加者同士がインタラクティブにコミュニケーションできる仕組みを作る必要があるなと。今も理解度のギャップを埋められる方法を模索しています。
県内企業を対象に、オンラインツールに触れてもらえるプレイベントを開催
────オフラインからオンラインへの切り替えの難しさを感じられて、工夫したことや試してみたことがあればお聞かせいただきたいのですが、いかがでしょうか?
井出:大きく2つあります。1つ目は、2020年7月の大規模なオンラインイベントを開催する前に、プレイベントとしてオンラインツールの使い方を学ぶセミナーを実施したことです。静岡県内でもコロナ禍で多くの事業者が急速にリモートワーク等への対応を迫られる中、オンラインに適応してもらうきっかけを作ることが目的でした。

2つ目は、オンラインの商談が円滑に進むための仕掛けづくりです。オンライン上で課題をシェアし、解決策を募る仕組みを構築したものの、イベント開催の直後しか商談が盛り上がらないという現実が見えてきました。そこで、2021年2月に開催した直近のイベントでは、事前に県内の事業者から課題を集めるアンケート(商談のタネ)を実施し、事務局が課題を噛みくだいて開催日より前に代理投稿するなど、Tailor Works上で活発なコミュニケーションが行われるよう工夫しました。
────実際にプレイベントを開催されて、手応えはありましたか?
井出:そうですね。今となってはZoomがないと仕事が進まないぐらいですが、当時はオンラインツールを用いた働き方がそれほど浸透していない段階だったので、先進的な取組みとしてテレビにも取り上げられました。静岡県内の状況に合わせて、迅速に開催を決断できたことが良かったと思います。
オンラインという新たな場所で、ビジネスマッチングに繋がる施策を生み出したい
────工夫されたことを2点お聞きして、とても上手くいった印象を受けたのですが、さらなる課題が見つかることもあったのでしょうか?
井出:オンラインツールを用いることで、県内の事業者にとって「スタートアップ企業とのタッチポイントが増える」というメリットはありましたが、顔をつきあわせて話すニーズが根強くあり、一歩踏み込んだ商談に至っていない現状があります。この点はオンラインではまだ越えられない壁だと感じました。また、他の地域ほどコロナの感染が広がっていない静岡県では、オンラインツールの利用はあくまで「その場しのぎ」という感覚を持っている方も多いのかもしれません。
このような背景が、県内の事業者がTailor Worksをあまり活用できていないことに繋がっているように感じます。ただ、既存の習慣になかったところから、すぐに劇的な変化は起こらないと思っています。県内でオンラインを積極的に用いてイノベーションを起こしている方々と連携しながら、私たち運営側がコミュニティコーディネーターとして、焦らずに一歩一歩、価値を伝えていくことを大切にしていきたいです。
────オンラインツールが使えることは大きな一歩になったと思いますが、その先はまだこれからという感じなんですね。オンライン化の価値についてはどのように考えられていますか?
井出:「オンラインコミュニティ」という概念は、日常的にオープンイノベーションを生み出す上で、非常に有用な考え方だと思います。Tailor Worksという場所の存在によって、新たな価値が生まれる可能性が大きく広がったと感じているので、色々と仕掛けていきたいと思っています!
────今回は、【Tailor Works】を使って、イベントをオフラインからオンラインへ切り替えた時のお話を中心に伺いました。次回は、Tailor Worksの第一印象や魅力について、お聞きしていきます。
Tailor Worksについて気になる方は、お気軽にお問い合わせください。