ソーシャルビジネスとは?社会課題を解決する事業の概要から 事例まで解説

ソーシャルビジネスとは?
社会課題を解決する事業の概要から
事例まで解説

ソーシャルビジネスという言葉を聞いたことはありますか?

ソーシャルビジネスは、社会課題をビジネスの手法で解決する事業のことで、SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資とともに注目が集まっている言葉です。

この記事では、ソーシャルビジネスの内容をはじめ、注目されている理由や、混同されがちなNPO法人による活動との違い、取り組むうえで大切なポイントまでまとめて解説します。

社会課題に興味関心がある方はもちろん、実際にソーシャルビジネスに取り組まれることを検討している方も、ぜひ参考にしてみてください。

ソーシャルビジネスとは

ソーシャルビジネスとは、バングラデシュの経済学者でありグラミン銀行創設者、ムハマド・ユヌス博士が著書「貧困のない世界を創る―ソーシャル・ ビジネスと新しい資本主義―」で定義した言葉で、人種差別、貧困、食糧不足、環境破壊といった社会問題の解決を行うビジネスのことを言います。

ソーシャルビジネスの定義

次に、経済産業省が定義するソーシャルビジネスについて解説します。

経済産業省では、「社会性」「事業性」「革新性」の3つの要素を満たす事業をソーシャルビジネスとして定義しています。

社会性

環境問題、少子高齢化、介護福祉など、解決が急がれる社会問題に取り組むことを事業活動のミッションにしている

事業性

社会性を主軸としたミッションにビジネスの手法で取り組み、事業活動を継続的に進めること

革新性

新しい社会的商品・サービスやそれを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること

ここでもっとも重要なのは、ソーシャルビジネスが社会問題の解決をミッションとし、ビジネスの手法で取り組んでいることです。

ボランティア活動と混同されることもあるソーシャルビジネスですが、ボランティアはあくまで寄付などの資金に頼って活動を継続しますが、ソーシャルビジネスは事業収益が資金源となります。

ソーシャルビジネスの定義って何?

ソーシャルビジネスとNPO法人の違い

ソーシャルビジネスに取り組む組織とNPO法人の決定的な違いは事業性です。

内閣府が2017年に行なった調査によれば、収益が1,000万円を超えるNPO法人の割合は全体で30.9%。収益が「0円〜100万円以下」のNPO法人は21.4%も存在します。

また、収益のうち「事業収益」は全体で77.0%ですが、「認定・特例認定法人」は67.9%でした。さらに、有給職員数は全体の32.1%が0人という結果が出ています。

参照:平成29年度 到底非営利活動法人に関する実体調査

この結果からもわかるように、NPO法人はソーシャルビジネスの定義の3要素の一つである「事業性」を満たしているとは言えないでしょう。

しかし、ビジネスでの解決が難しい社会問題、例えば母数の少ない疾病のワクチン開発、近年話題になった「子ども食堂」などは、NPO法人が主体となって活動することで成り立っているため、両者に優劣があるわけではありません。

ソーシャルビジネスの7原則

次にムハマド・ユヌス博士が定義する「ソーシャルビジネスの7原則」を解説します。

  1. 経営(ビジネス)の目的は利潤最大化ではなく、人々や社会を脅かす貧困、教育、健康、情報アクセス、環境といった問題を解決すること。
  2. 財務的・経済的な持続可能性を実現する。
  3. 投資家は投資額のみを回収できる。元本を上回った場合の配当は還元されない。
  4. 投資額以上に利益が生じた場合はソーシャルビジネスの普及と会社の改善・拡大に使用すること。
  5. 環境に対して配慮すること。
  6. 従業員に対して市場賃金と標準以上の労働条件を提供すること。
  7. 楽しみながら事業に取り組むこと。

この7原則では、「投資家には元本以上の配当を還元しない」や「楽しみながら事業に取り組む」など、一般的な企業で重要視されがちな「株主の利益最大化」や「利益追求」と相反する内容になっています。

資本主義の限界が指摘されることも増えた現代において、ソーシャルビジネスは次世代のビジネスのあり方と言えるでしょう。

ソーシャルビジネスが注目される理由

今なぜソーシャルビジネスに注目が集まっているのでしょうか?
そこには、国際的なSDGsへの関心・取り組みが背景にあります。

SDGsとは「持続可能な開発目標」を指し、2030年までに達成が求められる世界共通の目標です。17の世界的目標の中に169の達成基準があり、さらにその中に232の指標が存在します。食糧飢饉、貧困、環境保全、ジェンダー平等など、いまだ解決されていない社会課題が目標となっています。

2020年時点の各国のSDGsへの取り組みをスコア化し、166カ国のランキングとして公表された「Sustainable Development Report 2020」では、首位がスウェーデン、次にデンマーク、フィンランドで、日本は17位でした。

世界的には、目標2「飢餓をゼロに」と目標15「陸の豊かさも守ろう」において達成進捗が停滞しています。日本では、目標5「ジェンダー平等」と目標13「気候変動対策」、目標14「海の豊かさ」の達成度が低いとされています。

達成されていない社会課題があるということは、裏を返せばそこに大きなビジネスマーケットが眠っているともいえます。

コミュニティビジネスとの関係

ソーシャルビジネスと似た言葉にコミュニティビジネスがあります。

ソーシャルビジネスが国内外問わず社会課題全般を解決する事業であるのに対し、コミュニティビジネスは地域資源や人材を活かしてビジネスで地域課題を解決する事業のことを言います。つまり、コミュニティビジネスはソーシャルビジネスに内包される事業と言えるでしょう。

※コミュニティビジネスについて詳しく解説した記事はこちら
関連記事:コミュニティビジネスとは?地域課題を解決する取り組みの特徴や事例について

ソーシャルビジネスの歴史

ソーシャルビジネスの起源は古く1980年代まで遡ります。当時のイギリスでソーシャルビジネスの原型ができたのち、グラミン銀行の創始者であるムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞したことで、一躍ソーシャルビジネスに注目が集まるようになりました。

イギリスで始まったソーシャルビジネス

1980年代にイギリスで政権を執ったマーガレット・サッチャーは、「小さな政府」を志向する新自由主義経済政策「サッチャリズム」を実行します。

公共サービスの縮小を図ることで歳出は削減できましたが、失業者が増え、結果的に貧富の差が生まれました。この公共サービスの穴を埋めようと、民間企業が事業を立ち上げたことが現在のソーシャルビジネスの原型と言われています。

ソーシャルビジネスを国際的に広げたユヌス博士の取り組み

ソーシャルビジネスの概念が確立したのは、2006年にグラミン銀行とその創始者であるムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞した時期と言われています。

ユヌス氏は、1974年に母国に帰国した際にバングラデシュの飢饉・貧困を目の当たりにしました。その後、貧困の人々に少額融資を行うためグラミン銀行を設立します。グラミン銀行の最大の特長は、無担保低利少額融資で、俗に「マイクロファイナンス」と言われるものでした。

また、融資のおもな対象者が他では融資を受けづらい貧困層の女性であったため、事業の収益化ができるか疑問視されることもありましたが、返済率は95%を超えており、現在でも事業規模は拡大しています。

ソーシャルビジネスの事例

国内外問わず、さまざまなソーシャルビジネスの事例が存在しています。ここでいくつか紹介します。

【国内のソーシャルビジネス事例】

株式会社ボーダレス・ジャパン

社会起業家として有名な田口一成氏が経営する会社です。 産後うつ、不登校生徒の教育支援、エクアドル受刑者の就労支援、バングラデシュの就労支援など事業領域も30以上、地域も日本国内だけでなく、ミャンマー、エクアドル、ケニア、韓国など、グローバルに展開しています。

株式会社ウェルモ

株式会社ウェルモは⿅野佑介氏によって設立されたITベンチャーで、介護業界における情報の非対称性の解消と、すべての子供に学びの機会を平等にすることをミッションに活動しています。 介護ケアにおいて、負担が大きい業務であるケアプランの作成を効率化できるケアプラン作成システム(CPA)の開発・運用や介護事業所のデータを可視化したシステム「ミルモネット」、発達障害児童療育施設「UNICO」の運営などを行なっています。

Global Mobility Service株式会社

自動車ローンの審査に通らないため、車両を購入できない貧困層や低所得者層17億人をターゲットにした次世代型ローンサポート事業を行なっています。 モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)と最先端のIoTデバイス(MCCS)を活用し、利用者のモビリティデータをリアルタイムに収集・管理することで、与信が通らない人でもローンが組める仕組みを作り出しています。

【海外のソーシャルビジネス事例】

グラミン銀行

ムハマド・ユヌス氏が創設した金融機関で、ソーシャルビジネスの代表格としてその名が知られています。グラミン銀行は、融資を受けられない貧困層向けに無担保低利少額融資を行なっています。事業で得られた収益は、白内障の専門病院の設立や、通信サービス、ニット製品の製造など、別のソーシャルビジネスに再投資されているため、外部からの資金援助がなくても、自立的に事業を継続させることが可能になっています。

パタゴニア

パタゴニアは、アメリカ合衆国の登山家のイヴォン・シュイナード氏によって創業されたアウトドアブランドです。商品に使用する素材はきわめて環境に配慮したものを選び抜いています。また、パタゴニアで働く従業員の労働環境にも配慮しており、従業員は基本的にすべて直接雇用契約を締結でき、公正な報酬と手厚い社会保障を受けられます。

THE BODY SHOP

アニータ・ロディックが立ち上げたイギリス発の化粧品メーカーです。「社会と環境の変革を追求して、事業を行うこと」をミッションに掲げ、動物実験を一切行わない化粧品の製造、再生素材を使ったパッケージの採用、製品の原料調達から廃棄物処理までの一連のサイクルで地球環境の負荷軽減を目指すなど、徹底した環境配慮がなされています。

ソーシャルビジネスの課題

ここまでソーシャルビジネスの概略と事例について解説しましたが、ソーシャルビジネスは事業の継続や資金調達が難しいこと、ソーシャルビジネスの認知度が低いために人材が育たない・確保できない課題も存在します。

ソーシャルビジネス事業者は、認知度向上の課題を抱えている

2008年に経済産業省が行なった調査では、ソーシャルビジネスの認知度について「思いつかない」と回答した割合は83.6%、「1つ、2つある」が14.3%、「3つ以上ある」が2.1%となっています。

また、ソーシャルビジネスを行う事業者に対して事業課題について聞いたところ、「認知度向上」が45.7%、「資金調達」が41%、「人材育成」が36.2%と、認知度が課題であると強く感じている事業者が多いことがみてとれます。

参照:ソーシャルビジネス研究会 報告書

10年以上前の調査のため、当時より認知度は向上していると思われますが、まだまだ低い状況であることには変わりないでしょう。

社会課題の解決だけでは、事業は継続できない

ソーシャルビジネスでは、「社会性」「事業性」「革新性」の3要素のうち、事業性が欠けているケースが非常に多く見受けられます。社会課題の解決への意欲は高いものの、マーケティングや経営を専門とする人材の不足やスキル不足によって資金がショートし、倒産してしまうケースも少なくありません。

ソーシャルビジネスを進める上での課題とポイント

ソーシャルビジネスに取り組むポイント

前述したような課題をクリアにし、ソーシャルビジネスをうまく機能させるにはどのようなポイントを重視すれば良いのでしょうか。

まず、ソーシャルビジネスの核である「社会課題」、そしてその社会課題を解決する方法を明確にすることが大切です。収益性だけ満たしていないか、事業を推進して社会課題が現実的に解決できるか解像度を高くすることで、投資家や支援者から共感や賛同を得ることができるでしょう。

ソーシャルビジネスでは社会意義は高いものの、収益基盤が弱く事業継続が頓挫してしまったケースも多く見受けられます。他の企業と協業したり、地域の人々の協力をあおいだりして様々な人を巻き込み、良い循環が回るようなシステムを作り出すことが重要です。

資金調達が難しければ、日本政策金融公庫の「ソーシャルビジネス支援資金」や京都信用金庫が行っている「ソーシャルビジネス共感融資」などの融資を利用するのも一つの手です。

「ソーシャルビジネス支援資金」の詳細については、日本政策金融公庫のホームページをご覧ください。

高まるソーシャルビジネスの重要性と今後

国際的にソーシャルビジネスの重要性や注目度は高まりを見せています。というのも、先進国のマーケットは成熟しきっており、経済成長率も鈍化傾向にあるためです。

そこで、現在注目されているのがBOP層です。BOP層とは、Bottom of the Pyramidの略で、低所得者層のことを指します。主に、年間所得が3000ドル以下の世帯を指し、実に世界人口の約70%、40億人いると言われています。

BOP層は購買力がさほど高くないため、短期的な売上は期待できません。しかし、社会課題の解決を行うことで、所得が増加して将来の顧客になる可能性があります。

とはいえ、前述したようにソーシャルビジネスの取り組みには、事業の発展・継続や資金調達が難しいこと、ソーシャルビジネスの認知度が低いために人材が育たない・確保できないといった課題も存在します。

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