共創コミュニティを成功に導くインパクト思考とは

2023年3月17日(金)、株式会社テイラーワークスとトークンエクスプレス株式会社は、共創コミュニティ成功へのポイントを語るウェビナー『共創コミュニティ立ち上げの苦労と成功〜インパクト思考をもちいたKPI設定〜』を開催しました。
近年、事業を通じて社会や環境の課題を解決する「インパクト」の概念が注目を集めています。本ウェビナーでは共創コミュニティ立ち上げ時につまずきやすいポイント、インパクト思考によって新規事業を成功に導くヒントを解説しました。
ウェビナー概要
前半は、株式会社テイラーワークス(以下、テイラーワークス)コミュニティプロデュースチームの佐久間と菅野が、共創コミュニティで苦労した点とその解決策を語りました。
共創コミュニティプラットフォーム「 Tailor Works 」を提供。
「アイデアや社会課題を発信し対話できる場づくり」、「”共感・共創”によるつながりの創出」、「イノベーション創出に向けたコラボレーションの推進」の三つを軸に、アイデアやソリューションに共感した多様な人々との共創を創出するコミュニティ運営支援を行う。
https://tailorworks.com/
後半は前半の流れを受け、トークンエクスプレス株式会社(以下、トークンエクスプレス)CEO紺野氏がインパクト思考のトレンドと、新規事業におけるインパクト思考の活用方法を具体的に解説しました。
インパクト思考とそのマネジメント手法の提供により企業目的の達成をサポートする、日本で唯一の会社。
事業を通じて解決したい社会課題・環境課題の明確化、実現に向けたオペレーション設計まで多彩なソリューションを提案する。
https://token-express.com/
共創コミュニティ立ち上げ時に苦労しやすい2つのポイント
Tailor Worksのプラットフォーム上では、行政・自治体、事業会社、金融機関などが多様なステークホルダーを巻き込みながら運営する累計43のコミュニティが生まれ、事業者のマッチングやDX推進、融資先事業の業績改善などが実現しています。
さらに、静岡のコミュニティ参加者が北海道のプロジェクトに参加するなど、コミュニティの垣根を超えた共創も生まれています。しかし、実は苦労する点もあったという佐久間さん。どのような難しさがあったのでしょうか。
1. 集客数を追いかけてしまう
まず、掲げられた課題解決に対する貢献意欲の高いメンバーを集めることに注力するあまり、プロジェクトが発生しづらい点が挙げられました。
「北海道の地域課題を解決する」というHOP(Hokkaido Open Platform、旧 北海道地域応援プラットフォーム)の事例では早い段階で200名ものメンバーが集まりました。しかし互いに知り合いではないメンバー同士で共創の道筋を模索するのに工夫が必要だったといいます。
2. メンバーは集まったが具体的な「旗」が立っていない
次にあがったのは、具体的なテーマを絞れていなかった点です。HOPの事例では、当初北海道全体の産業活性化をテーマに掲げてスタートしましたが、 実際に地域の事業者と会話をしていくと、北海道は大変広く、地域によって課題がさまざまであることが改めて見えてきたとのこと。メンバー各々に思いや強みがあるものの「具体的に北海道のなにを支援するか」を定めないままでは迷いが生じてしまったそうです。
成功する共創コミュニティに不可欠な2つのポイント
こうした試行錯誤を繰り返すなかで、成功しやすいKGI・KPIが見えてきたそうです。 「KGI・KPIを意識すること」、「テーマ=旗を立てること」が共創コミュニティの成功にとって重要だと佐久間さんは述べます。
1. 成功しやすいKGI・KPIを意識する
成功している共創コミュニティではメンバーの質の高い行動、たとえば投稿への返信や発信者が多いといいます。一方で、オーナーの活動(イベント数やSNSの告知回数)ばかりを追うとメンバーは受動的になり、オーナーの孤軍奮闘になってしまいやすいそうです。
2. 重点テーマ=旗を立てる
KGI・KPIを意識しつつ、コミュニティの方向性を議論したあとに重点テーマ=旗を設定します。やるべきこと・やりたいことが多くあるなかで「絞る」作業には勇気が必要です。HOPの事例では、北海道に対してどのようなインパクトを起こせるか、どういった社会課題を解決するのかといった「軸」を定め、現在も議論を進めていると菅野さんは話します。 1本の旗が立つことで具体的なアクションプランや成果が生まれているそうです。
成功事例:MRI(三菱総合研究所)
その他の好事例としてMRIのイベント「MRI DEMO DAY」があげられました。 この取り組みでは、社会課題解決に向けた共創の場づくりを支援しています。開催されたイベントでは、カーボンニュートラルや食生活などを重点テーマとするワーキンググループが多く生まれました。
世界的にも注目を集める「インパクト思考」のトレンド
後半では、トークンエクスプレスの紺野氏から新規事業とインパクト思考の関わりについて学びます。 インパクトとは「事業によって生じる、社会・環境の変化」のこと。公的機関や、NPOをはじめとするソーシャルセクターが長年最重要視してきた考え方で、近年は一般企業にも浸透しつつあるそうです。
たとえば資本主義の象徴ともいえるマクドナルドは、すでに担当副社長を置いて事業を進めています。また、日本でも岸田政権が「新しい資本主義会議」などの場で、インパクト思考の社会実現を議論しています。
新規事業で仲間を集める4つのポイント
インパクト思考は、共創コミュニティの立ち上げだけでなく、少し幅を広げて新規事業づくりに有用だという紺野氏。
新規事業では、まず着想を得て、顧客は誰か・適するソリューションはなにか考え、サービスを開発し、事業拡大、EXITへと展開します。これらのどのフェーズにおいても「仲間集め・味方づくり」は最も重要であり、共創コミュニティが求められるゆえんだと解説されました。
また紺野氏によると、仲間集め・味方づくりには4つポイントがあるといいます。
1. どんな人を仲間にしたいか明確化する
2. 事業を通じて実現したい未来を、1で挙げた人たちにとって魅力的なものにする
3. 実現したい未来に対する現在地と次のステップを、具体的に説明する
4. メディアを通じて効率的に発信し、信用を得る
Tailor Worksでの「旗を立てる」アクションはポイントの2つ目にあたり、ここで「インパクト設計」が役立つのだそうです。
仲間集めに効果的な「インパクト設計」
そもそもインパクト思考とは、新規事業などを通じて人々の行動変容を起こし、波及させていくという考え方です。インパクト思考を具体的にどう実現するか組み立てていくことを「インパクト設計」と呼びます。
インパクト設計の肝はビジョンからの逆算です。スライドの右側にある濃い水色「ビジョン」を最初に掲げます。このビジョンに至るために生み出すべき社会変化・必要な事業を、KGI・KPIを置きながら計画することが重要なのだと解説がありました。
インパクト設計をもちいた成功事例
インパクト設計は仲間集めの4ポイントすべてにおいて役立つフレームワークだとして、2つの事例が紹介されました。
事例1:株式会社ポケットマルシェ(現:株式会社雨風太陽)
1例目は、産直ECプラットフォームを運営する株式会社ポケットマルシェ(現:株式会社雨風太陽)です。同社は「地方の生産者と、都市圏の消費者とのあいだにあるコミュニケーションの断絶」を大きな課題としていました。
もともと掲げていた「都市と地方をかきまぜる」というビジョンを、起こすべき社会変化と運営するサービスとともに図にまとめ、指標も定めて対外的に発信したそうです。
その結果、JALやJR東日本系列などのさまざまな投資家を集めることができました。
事例2:株式会社商船三井
商船三井では、脱炭素系の新規事業立ち上げにおいてサービスを提供しています。事業のインパクト設計、事業の成果を測定できる指標設計、社内での味方を増やす活動計画の3点に携わりました。
社内での仲間集めでは誰にアプローチをするのか、誰にプロジェクトの応援者となってもらい、社内でどう展開するかを考えていきます。守秘義務で多くは伝えられないものの、仲間集めの過程には、新規事業が目指す世界観を明確にする「インパクト」の考え方があったそうです。
まとめ
本ウェビナーでは、「共創コミュニティ・新規事業の立ち上げにおいて、旗を立てる大切さ」に着目しました。テーマが設定されていなかったために、思うようにプロジェクトが発生しなかった事例の一方で、事業インパクトの明確化によって仲間集めが非常にうまく進んだ事例も見られました。
一見、当たり前ともとれるインパクトの明確化ですが、メンバーが深くコミットでき、他者にも共感・納得してもらえるところまで落とし込めているケースは少ないのではないでしょうか。
共創コミュニティについてご興味を持たれた方は、株式会社テイラーワークスへ、 インパクト思考についてより詳しく知りたい方は、トークンエクスプレス株式会社へお問い合わせください。