
仙台市役所
産業振興課
加藤 廣康さん
仙台市役所 産業振興課の、加藤 廣康さんにお話を伺いました。
コロナ禍で、人と会うことや移動することに制約を強いられ、多くの企業は従来の経済活動を行うことが難しくなっています。そんな中、日頃から様々な企業と取り組みを行う加藤さんは「不確実性が高い世界だからこそ、挑戦することが重要」という想いを持って活動を続けています。
仙台市では、コロナ禍における地方創生の一環としてオンラインを活用した新たな産業交流の促進も目指しており、その手法の一つとして、Tailor Worksを活用したオンラインコミュニティである『仙台・東北X-TECHコミュニティ』の取り組みが開始されました。

────仙台・東北X-TECHコミュニティを開設した経緯を教えてください。
加藤:東北には、ITに関連するテクノロジーを持った企業が多くあります。例えば仙台にはソフトウェア関連の企業が集積していますし、福島にはロボットテストフィールドという広大な実験場があるので、ロボット関連の企業が多く集まっています。こういった、いわゆるDXに欠かせないITテクノロジーを持った企業と、東北内外の幅広い企業の交流を深めることによって、新しい取り組みやイノベーションの種となるようなコミュニティ運営をやっていこうということでスタートしました。
また、コミュニティの運営にあたっては、一般社団法人マシンインテリジェンス研究会という団体と仙台市が協力しています。マシンインテリジェンス研究会は、仙台・東北を中心とするIT関連企業が集まっている団体で、情報交換会・交流会が活発に行われています。今後は仙台・東北だけで関係を留めるのではなく、域外の企業や首都圏の企業、全国の方々とも関係性を深められたらと思ったのが、コミュニティを開設したきっかけです。
────情報交換会や交流会などのイベントは定期的に開催されているのですか?
加藤:そうですね。コロナ禍の前から、イベントを年に4~5回ほど開催していました。
例えば、東北大学農学部の先生をお招きして、各メンバーが自分たちの技術を農業の分野で活用するには?といったアイデアを膨らませたり、大手スーパーの方をお呼びして小売・流通業界の課題を発表していただき、「私たちの技術ならこういうふうに解決できるかも」といったワークショップを行ったり。様々なゲストの方をお呼びして、新しいことを考えていくイベントを行ってきました。
そんな中、コロナ禍でリアルでの開催が難しくなり、オンラインに切り替えてやりましょうということで、2021年からオンラインでのイベントを開始しました。
コロナで失われた地域同士の横のつながりを取り戻す
────オンラインコミュニティを開設する前は、具体的にどのような課題を抱えていましたか?
加藤:新しい出会いによる協業や販路開拓などの機会が失われていたと感じます。
展示会などのリアルの場で得られていた出会いがきっかけで、コラボレーションや新たな取引成立につながるようなシチュエーションがなくなってしまいました。これが地域の抱える課題としては大きいと捉えていますね。
ウェビナーなどのオンラインコンテンツが毎日のように発信され、全国で活躍されている方のお話を聞く機会は増えました。一方で、地域同士の横のつながりや偶然の出会いなど、これまでリアルでつながっていたものがなくなったという課題がありました。こういった課題は、ウェビナーで補完できないことがあるので、それを埋める何かが必要だと感じていますね。
────ウェビナーなどが全国に浸透してきたので、どのエリア同士もオンラインでつながっていると思っていたのですが、地域と地域、地域と首都圏で違いがあるのですか?
加藤:イベントやウェビナーは首都圏の企業や団体が主催のものが多くて、首都圏から遠い地域の方まで気軽に参加できるようになったと思います。その反面、地域内でのつながりは薄くなってしまった印象があります。コロナ禍になる以前は、地域内の仲の良い企業同士で飲みに行ったり、交流会で色んな出会いが広がり新しいビジネスにつながる流れがありましたが、そういったつながりが少なくなってきていますね。
地域と首都圏との点と点のつながりは沢山できたのですが、地域内での広がるようなつながりは減っているように感じます。
その代わりとなるようなものとしてTailor Worksを活用すれば、横のつながりや首都圏も含めたつながりを持てるのかなと期待してTailor Worksを導入しました。
────そもそも、Tailor Worksを知ったきっかけは何でしたか?
加藤:パーソルイノベーション様からのご紹介です。同社とは、昨年度仙台市が実施した「X-TECHイノベーション・エコシステム形成促進事業」の受託者として、地域におけるIT人材の育成やITテクノロジーを活用したビジネスの創出について一緒に考えながらプロジェクトを進めてきました。
コロナ禍での課題感について共有したところ、Tailor Worksというサービスがあって、もしかしたら課題解決につながるかもしれないとご紹介いただきました。
色々なオンラインサービスがあることはもちろん認識していたのですが、静岡県や別府市の事例など地域の事例がいくつかあって、それも含めてパーソルイノベーション様にご紹介いただいたので、手触り感のある形で理解することができました。
エリアも属性も異なる方々と連携できる点が導入の決め手
────Tailor Worksを導入した決め手を教えてください。
加藤:オープンで、様々な立場の人が交流していることが良いな、と思いました。コロナ禍の前から「どこの誰か分からない人とでも出会えること(偶然の出会い)が、多様性を担保すること」だと感じてはいながらも実際の行動には移せず、この点は当時の課題でした。
Tailor Worksでは、自分の所属するコミュニティに留まらず、他のコミュニティにも参加できるので、この幅の広がりがメリットだと感じました。
────仙台・東北でも広がりを意識されていたと思うのですが、仙台・東北以外のエリアともつながりが作れるというところもポイントでしたか?
加藤:エリアもそうですが、属性の異なる方々ともつながれる点はポイントでした。
マシンインテリジェンス研究会はIT関連企業の集まりなので、これまでもIT企業同士のつながりはありました。しかし、金融機関や首都圏のスタートアップ企業のような方々との交流や議論はこれまでの取り組みでは実現できなかったので、この点にもメリットを感じていますね。
活動内容を可視化し、Tailor Works上で人と人との輪を広げていく
────今後の展望を教えてください。
加藤:私たちは、まだまだ若いコミュニティなので、ここからアクセルを踏んで取組を活性化させていきたいと思っています。
実は、先日イベントを行いまして、各団体やスタートアップ企業の方々にピッチをしていただきました。色んな場所から参加される方がいらっしゃるので、質疑応答も含めて気軽に話を聞く機会が増えて、地元の企業の方も刺激を受けたのではと思います。また、技術的にも親和性が高そうな企業があったので、次のステップにつなげられそうです。今回のイベントを契機に、今後は交流イベントを開催するなど、コンテンツを充実させていきたいです。
そして、コンテンツを充実させていくのと同時に、全国に存在する、きらりと光る技術を持ったテクノロジー企業にもどんどん仲間に入っていただけるように、輪を広げていくのが次のステップですね。イベントレポートを公開することで、私たちのコミュニティに興味を持っていただける人を増やしたいです。
────今後、Tailor Worksに期待することを教えてください。
加藤:2つありまして、1つ目は人と人とのつながりをどれだけ作っていけるかということです。テイラーワークスさんにはこの観点での取り組みにご一緒いただきたいと思っています。今はDXやAIなどと言われていますが、何が課題で、どのように使って、どのような仕掛けをするのか考えるのは、結局は「人次第」だと思うんですよね。かつ、1人や1社など個でできることは限られているので、人と人とをどれだけつなげられるかということ自体が価値を生み出すことに直結すると思っています。
行政的な見方をすれば、どれだけ人と人をつなげられるかが産業競争力や国力に直結すると思っています。国や地域産業の発展のため、テイラーワークスさんには人と人とのつながり作りにお力添えいただきたいと思っています。
2つ目は、コミュニティ内だけでなくて、コミュニティ同士の横の連携に取り組んでいけると、面白いことが生まれそうだと思っています。
私たちはITを中心にしたコミュニティですが、連携という点では特にITにこだわっているわけではありません。これからは、ITが前提の社会になっていくと思うので、ITだけではなく、色々な業界の方々とコラボレーションをしながらITだけでは実現できない新しい価値を生み出していきたいですね。
────最後に、TailorWorksの導入を検討している方へのメッセージをお願いします。
加藤:正直、コロナ禍で何が正解か分からずに手探り状態だったんですよね。「こうすれば上手くいく」という確約がなく、移動ができない、人にも会えないという誰もが経験したことがないような状況の中で、どうやって経済活動を継続していけば良いのか不安になっていました。
ただ、「答えや経験したことがないからこそ、新しいことに挑戦しないと何も始まらない」というスタンスでコミュニティを開設したので、不確実性が高い世界で、チャレンジすることが本当に重要だと思っています。
コロナ禍の前は、展示会やイベント、交流会、お酒の場で出会った偶然のつながりが起点となり、新しい価値のある取り組みにつながっていくことがよくありました。今後は、Tailor Worksをきっかけに、偶然の出会いや人と人とのつながりからイノベーションを生み出す種が生まれて、芽が育っていく取り組みにつながると良いなと思っています。ユーザーがたくさんいればいるほどイノベーションが起こる可能性は高まると思うので、人と人との出会いを大事にして、一緒に面白いことを仕掛けていきましょう!
────加藤さん、色々とお話しいただきありがとうございました。仙台のコミュニティに興味のある方は、こちらからぜひご参加ください。